止めた浄水場、統合で空いた処理場、更新工事で入れ替えた設備。 使わなくなった資産をどう帳簿から落とすかは、公営企業会計に移行した団体が 決算のたびに突き当たるところです。
このとき「除却で落とすか、減損で落とすか」という相談のされ方をすることがあります。 ですが、これは選べる処理ではありません。 どちらになるかは、会計処理の好みではなく、その施設について何を決め、実際に何をやめたかで 決まります。
結論
出発点は、廃止することを決めたかどうかです。 ただし、決めただけでは除却になりません。実際に使用をやめたかによって、 その年度にやることが変わります。
| その施設について | その年度にやること | どの科目に出るか |
|---|---|---|
| 廃止を決め、使用もやめた | 除却 | 資産減耗費(固定資産除却費)=営業費用 |
| 廃止は決めたが、まだ使っており処分は先の年度 | 決めた年度に減損の判定。除却は実際に処分した年度 | 決めた年度は減損損失=特別損失、処分した年度は資産減耗費=営業費用 |
| 決めていないが使っていない | 遊休資産として減損の判定 | 減損損失=特別損失 |
| 使っており、廃止も決めていない | そのまま減価償却(それでも毎年度、減損の兆候は判定する) | 減価償却費=営業費用 |
減損の判定に進んだからといって、必ず損失が出るわけではありません。 回収可能価額が帳簿価額を上回れば、減損損失は計上されません。
そして、この違いは見た目にも効いてきます。 地方公営企業法施行規則第25条は経常損益金額を「営業損益金額に営業外収益を加えて得た額から 営業外費用を減じて得た額」と定めており、特別損失はここに入りません。 つまり同じ施設でも、除却なら原則として経常損益が動き、 減損なら経常損益は動かず当年度純損益だけが動きます (除却でも特別損失になる場合があります。後で扱います)。
数字が違うからといって、有利なほうを選べるわけではありません。 選べないからこそ、廃止をいつ決めたのかを記録に残しておく必要があります。
除却と減損は、損益計算書の別の場所に出ます
まず、どこに何が出るのかを確認します。地方公営企業法施行規則第4条第4項は、 特別損失に属する損失を「固定資産売却損、減損損失、災害による損失、過年度損益修正損及び その他特別損失」に細分するとしています。減損損失はここに名指しされていますが、 除却損は名指しされていません。 除却は原則として営業費用の側、具体的には資産減耗費です (金額が大きく非経常的な除却は「その他特別損失」の側に回ります。これは後で扱います)。
総務省「地方公営企業法の適用に関するマニュアル」が示す下水道事業の収益費用明細書のイメージでは、 実際に次のように並んでいます。
| 款・項・目・節 | 金額 |
|---|---|
| 営業費用 → 資産減耗費 | 605,000円 |
| うち 有形固定資産除却費 | 557,000円 |
| うち 撤去費用 | 48,000円 |
| 特別損失 → 減損損失 | 50,000円 |
節の名称は一通りではありません。施行規則の別表第一号(水道事業)は資産減耗費の節として 「固定資産除却費」「たな卸資産減耗費」を挙げており、Q&A集の設例では撤去工事費も 固定資産除却費に入れています。どちらにしても、撤去に要した費用は資産減耗費の側であって、 新しく造る資産の取得価額ではありません。Q&A集も 「既存資産の撤去費用は、新たに取得する資産の取得価額には含めず、収益的支出として整理することが 一般的であると考えられます」としています。
撤去分と新設分が1本の請負契約になっている場合も同じです。Q&A集は 「契約において撤去工事費用と新規管路布設費用の額が明確に区分されていない場合においても、 合理的な基準により按分し、それぞれ3条支出、4条支出に計上することが望まれます」としています。 契約が1本だからまとめて建設改良費、という処理はできません。
長期前受金の戻入も、除却と減損で出る場所が違います。施行規則第21条第2項は、 償却した長期前受金について「償却資産の減価償却又は除却に伴うものであるときは当該事業年度の 営業外収益として、第8条第3項第2号の規定による償却資産の帳簿価額の減額に伴うものであるときは 当該事業年度の特別利益として整理するものとする」と定めています。 除却なら営業外収益、減損なら特別利益です。損失と同じ側に揃っています。
なお、減損損失と長期前受金戻入は相殺できません。Q&A集は 「特別損失に計上する減損損失と特別利益に計上する長期前受金戻入は相殺せず両建て処理となります」 としています。
分かれ目は「廃止を決めたか」と「使用をやめたか」
ここが本題です。総務省「公営企業会計適用後の会計業務に関するQ&A集」は、 被災した施設の除却時期について次のように答えています。
固定資産は、物理的減耗、事故、陳腐化等により、資産本来の使用に耐えず使用不能又は不経済、 不適当となったとき、その用途を廃止することとなり、また、除却の意思決定をしても、 処分に時間を要する場合は現物が残っている場合でも除却処理をすることがあります。 (中略)施設の廃止については、いかなる時点においても当該事業体の意思決定により判断するものと 考えられることから、「施設を廃止することを決定した日の属する年度」に除却をするものと 考えられます。
なお、使用しなくなった場合であっても除却の意思がなく遊休資産となる場合は、減損会計が適用される 点にご留意ください。
読むべきところは2つあります。
1つめ。除却の時期は、撤去した日ではなく、廃止を決めた年度です。 この問いは被災した施設についてのもので、資産はすでに使用に耐えない状態にあります。 つまり使用をやめていることが前提で、そのうえで現物がまだ建っていても除却します (まだ使っている施設について廃止だけを決めた場合は別です。次の項で扱います)。 同じQ&A集は、費用の都合で撤去できない資産について 「実際に除却処理ができない場合の取り扱いに関して、会計処理上は有姿除却という考え方があります。 すでに使用されていないものがあれば、除却処理は可能です」としたうえで、 「除却処理を先行して行った結果、実際の物自体を撤去することを失念しないように管理を徹底する 必要があります」と付けています。有姿除却台帳のような形で現物を追えることが条件です。
ただし、資産そのものが無くなった場合は別です。同じQ&A集は、被災した資産の除却年月日について 「実際に除却した年月日となるため、被災した資産であれば、被災日や被災後に現場で滅失したことを 確認した年月日となります」としています。施行規則第9条第1項が「滅失し」と「廃棄した」を並べて 書いているとおりで、滅失は事実の発生、用途廃止は意思決定です。時点の取り方が違います。
2つめ。廃止を決めていないなら、除却ではなく減損の判定に進みます。 統合で止まったまま方針が決まっていない処理場は、ここに入ります。 Q&A集には、統合で未稼働になった農業集落排水事業の処理場4施設について 「遊休資産として、減損損失の計上の要否を検討すべきと考えられます」と答えた例もあります。
管渠の残置についても同じ整理です。人孔の上部だけ撤去して下部を地中に残す場合について、 Q&A集は「単なる使用廃止の場合で残置して撤去しない場合であっても、会計上は除却として 取り扱う」としたうえで、「使用廃止の意思決定を行わず、単なる遊休状態とする場合、 『減損損失』として計上することが原則的な方法となる場合がありますのでご留意ください」 としています。
決めた年度に計上するのは、除却とは限りません
実務でいちばん揉めるのはここです。Q&A集には、機能は停止しているものの 他の2つの浄水場のデータを集約して送信する役割が残っている第1浄水場について、 処分に係る設計委託料をX2年度に予算計上する予定で、X3年度に減損処理と除却処理を まとめて行ってよいか、という問いがあります。回答はこうです。
第1浄水場の廃止に関する意思決定を行った年度に減損損失の処理をするべきであり、 設問の例であれば、X2年度の委託料予算を取ることとしたX1年度か、委託の結果を受けて 廃止の意思決定をするのであればX2年度に行うものと考えます。
なお、廃止の意思決定をしたとしても、減損判定の結果、回収可能価額が帳簿価額を上回る場合は、 減損損失は計上されません。
ここから3つ読めます。
1つめ。撤去設計の委託料を予算計上した時点で、実質的に決めていると見られることがあります。 起案書の日付だけでなく、予算の動きから遡って判断されます。
2つめ。決めた年度に計上するのは、除却ではなく減損です。 この浄水場はまだ役割を持っており、使用をやめていません。 廃止を決めただけでは用途廃止になりません。 除却は、実際に中の機械や配水池を 整理したX3年度です。「決めたのだから除却」と短絡しないでください。
3つめ。廃止を決めても、減損損失が出ないことがあります。 回収可能価額が帳簿価額を上回れば計上されません。「決めた=必ず損失」でもありません。
また、兆候の判定だけ先にやって損失の計上を翌年度に送る扱いは否定されています。
固定資産の減損は、兆候判定⇒認識判定⇒測定という一連の流れで判断することになります。 そのため、認識判定まで行って、減損損失の計上を翌年度にすることは適当ではありません。
数字で見るとどう違うか
同じ施設を、廃止を決めて使用もやめ、その年度に除却した場合(ケースA)と、 決めずに遊休資産とした場合(ケースB)で計算してみます。 以下は説明のための架空の設例で、実在の団体のものではありません。 ケースAは毎期の更新工事に伴うものとして、資産減耗費(営業費用)で処理する前提にしています。
前提は次のとおりです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 帳簿原価 | 800,000,000円 |
| 減価償却累計額 | 600,000,000円 |
| 帳簿価額 | 200,000,000円 |
| 長期前受金(国庫補助金) | 400,000,000円 |
| 長期前受金収益化累計額 | 300,000,000円 |
| 長期前受金の残高 | 100,000,000円 |
| 撤去費用(ケースAのみ) | 30,000,000円 |
| 正味売却価額(ケースBの回収可能価額) | 20,000,000円 |
長期前受金の戻入額は、除却か減損かで根拠条文も計算の基礎も違います。
- 除却は施行令第26条第2項。「残存価額に相当する額」に「繰延収益の額の割合」を乗じます
- 減損は施行規則第21条第2項。「帳簿価額を減額した額に相当する額」、つまり減損損失の額に 同じ割合を乗じます
総財公第11号も、この2つを「(施行令第26条第2項及び施行規則第21条第2項)」と併記しています。 割合はどちらも、残高100,000,000円÷帳簿価額200,000,000円で50%です。
| ケースA(廃止を決め、使用もやめて除却) | ケースB(遊休資産として減損) | |
|---|---|---|
| 営業費用(資産減耗費) | 230,000,000円 | — |
| 特別損失(減損損失) | — | 180,000,000円 |
| 営業外収益(長期前受金戻入) | 100,000,000円 | — |
| 特別利益(長期前受金戻入) | — | 90,000,000円 |
| 経常損益への影響 | ▲130,000,000円 | 0円 |
| 当年度純損益への影響 | ▲130,000,000円 | ▲90,000,000円 |
ケースAの資産減耗費230,000,000円は、帳簿価額200,000,000円に撤去費用30,000,000円を足した額です。 ケースBの減損損失180,000,000円は、帳簿価額200,000,000円から回収可能価額20,000,000円を引いた額で、 戻入はその50%の90,000,000円になります。
当年度純損益で見ると、ケースAのほうが40,000,000円だけ重くなります。内訳は2つです。
- 撤去費用30,000,000円。 ケースAでだけ現実に出ていきます
- 残した資産の純額10,000,000円。 ケースBでは20,000,000円が資産として残りますが、 その裏には戻入されないままの長期前受金10,000,000円も残ります。 損益に効くのは差引きの10,000,000円です
30,000,000円+20,000,000円で50,000,000円にはなりません。 資産を残せば、その資産に対応する補助金も同じ割合で残るからです。 戻入率が50%だからこの差は40,000,000円で、たとえば全額が補助金の施設なら、 残した20,000,000円は損益にまったく効きません。
出る場所が営業費用か特別損失かという違いは、経常損益にだけ効きます。
経常損益が動くかどうかは、決算の見え方と議会への説明に直結します。 だからこそ、決算期末になってから「どちらにするか」を相談する形にしてはいけません。 廃止を決める起案の段階で、会計処理も併せて決めておくのが順序です。
除却のときに落としやすいところ
施行規則第9条第1項は「固定資産が滅失し、若しくは償還され、又はこれを譲渡し、撤去し、 若しくは廃棄したときは、その都度、それらの割合に応じてその帳簿価額を減額しなければならない」 と定めています。総財公第11号はこれを受けて、 「帳簿価額又は帳簿原価を減額すべき場合、その資産が減価償却の対象であり、減価償却累計額がある 場合は、その対応する累計額を減額すべき帳簿原価から控除した残額を費用勘定に除却損として 計上しなければならないものであること」としています。
そのうえで、実務で漏れやすいのは次の点です。
撤去物件の振替。 施行規則第9条第2項は「固定資産を撤去した場合において、撤去物件のうち、 再使用の可能なものについては、当該撤去物件の帳簿価額以内でこれをたな卸資産に振り替えるものとする」 としています。抜き取ったポンプを予備品として持つなら、ここを通します。
一部除却の按分。 一式で登録した資産の一部を更新する場合、Q&A集は 「資産全体の平米数のうち、除却部分の平米数割合を求め、取得価額に乗じることで一部除却金額を 合理的に算出します」とし、数量按分が使えない場合には 「既取得資産から改良費に対応する工事費を、例えば建設工事費デフレータで割り戻し、 除却額を算出する方法も考えられます」としています。
予算。 施行令第18条第5項ただし書は「現金の支出を伴わない経費については、この限りでない」と しており、帳簿価額を落とす部分については予算がなくても支出できます。 ただしQ&A集は、予算5億円に対し決算7億円となった例について 「当初の予算額から大きく乖離する場合は、業績見込みを適切に把握するため、予算を補正することが 望まれます」としています。撤去工事費のように現金が出る部分は、この例外の対象ではありません。
除却損が特別損失になる場合もあります。 Q&A集は、撤去工事の予算科目を尋ねた問いへの答えで 「固定資産除却費もその金額が大きい場合で、その除却が非経常的な場合は、当該期間の経営成績を 明確にするという立場から特別損失として処理すべきとされています」としています。 除却される資産の簿価も特別損失になるのかを尋ねた別の問いへの答えでは、これを認めたうえで 「金額だけでなく非経常的なことであることが必要と考えますので、毎期経常的に発生する更新工事に よる除却簿価は営業費用で処理すべき」としています。 「金額が大きい」の線引きについては、解体工事費が例年の除却費を上回る見込みだという問いへの答えで 「原則として、営業費用での処理となりますが、著しく多額な金額の場合等には、特別損失での処理も 差し支えないものと考えられます」としたうえで、「金額的に重要かどうかの判断は、事業規模や 通常発生する金額に照らして、個別に判定することになると考えられます」としています。 基準になるのは自分の事業で例年いくら出ているかであって、決まった金額ではありません。 除却=必ず営業費用、と単純化しないでください。判定は金額と経常性の両方です。
土地は除却しません。 Q&A集は「土地は非償却資産であり、年数が経過しても使用可能であることから 除却は想定されません」としています。使わなくなった土地は、売却か減損のいずれかで扱います。
減損は4つの手順で進みます
減損の根拠は施行規則第8条第3項第2号で、固定資産のうち「事業年度の末日において予測することが できない減損が生じたもの又は減損損失を認識すべきもの」について、帳簿価額を減額するとしています。 手順は「地方公営企業が会計を整理するに当たりよるべき指針」(平成24年総務省告示第18号) 第4章第1節第3に定められており、Q&A集はこれを 「固定資産のグループ化/減損の兆候の有無の判断/減損損失の認識の判定/減損損失の測定、 帳簿価額の減額(減損処理)」の4つとして整理しています。
兆候の例は4つ挙がっています
指針は、減損の兆候の例として次の4つを挙げています(原文のまま)。
(1)固定資産又は固定資産グループが使用されている業務活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが、 継続してマイナスとなっているか、あるいは、継続してマイナスとなる見込みであること
(2)固定資産又は固定資産グループが使用されている範囲又は方法について、当該固定資産又は 固定資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化が生じたか、あるいは、生ずる見込みであること
(3)固定資産又は固定資産グループが使用されている事業に関連して、経営環境が著しく悪化したか、 あるいは、悪化する見込みであること
(4)固定資産又は固定資産グループの市場価格が著しく下落したこと
指針の書き方は「例として次の事象が考えられる」です。これで尽きるという列挙ではありません。
事業用資産だから兆候なし、という省き方はできません。 Q&A集は 「単に事業用資産であるというだけで『減損の兆候なし』ということではなく、毎年度、 ①~④のいずれにも該当しないという判断に基づいて、当該資産について『兆候なし』と判定することが 重要と考えます」「毎年度、新たに遊休資産となっている資産がないかどうかを確認することが必要です」 としています。
公営企業だけのルールがあります
(1)の「業務活動から生ずる損益又はキャッシュ・フロー」を計算するとき、 一般会計からの繰入金は、原則として収益の側に入れます。 平成28年の 「地方公営企業会計基準見直しQ&A」は、兆候の判定で繰入金を勘案してよいかという問いに こう答えています。
減損の兆候を見る場合においても、一般会計からの繰入金や長期前受金戻入は原則として 収益又はキャッシュ・フローとしてカウントする。
より新しい令和5年3月のQ&A集も、「業務活動から生ずる損益」とは営業外損益・特別損益を含む 最終損益のことかという問いに、こう答えています。
業務活動から生じる損益又はキャッシュ・フローとは、各資産グループの営業損益や 事業活動によるキャッシュ・フローが想定されます。ただし、営業外収益等に含まれる 他会計からの繰入金や、長期前受金戻入を加えることが可能です。
読むべきところは2つあります。土台になるのは最終損益ではなく営業損益であること。 そして、繰入金だけでなく、長期前受金戻入も入れられることです。 補助金で造った施設ほど戻入は大きく、これを落とせば損益は簡単にマイナスに振れます。 繰入金を前提に収支を組んでいる事業なら、なおさらです。 落として判定していると、本来は兆候なしの資産まで兆候ありに振れます。 繰入金を入れて判定するのが、民間の減損会計と決定的に違うところです。
なお、「直前3事業年度における平均額」という決まりは、兆候判定ではなく、その先の 将来キャッシュ・フローの見積りについてのものです。 指針は、将来キャッシュ・フローの 見積りに当たって「業務活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローには、経常費用に対する 一般会計又は他の特別会計からの繰入金等を含む。当該繰入金等の額は、当該事業年度の 直前3事業年度における平均額によることとし、これにより難い場合は合理的に見込まれる額とする」 としています。実績を見る兆候判定と、先を見積もる認識判定とで、繰入金を扱う場面が違います。
グルーピングについても、平成28年のQ&Aが 「地方公営企業は営利を目的としていないことから、事業単位別、施設別の固定資産グループ間の 財政調整を行うことを前提に、公営企業全体の損益収支の均衡を予定しているケースがあり、 このようなケースにおいては、固定資産グループ単位でマイナスが生じていたとしても、 必ずしも兆候ありと判断する必要はない」としています。 ただし同じ回答は「当該固定資産グループが、当初見込んでいた損益又はキャッシュ・フローを 達成しているかを踏まえて判断すべきである」とも言っており、無条件ではありません。
認識と測定
兆候があれば、割引前将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額を比べ、 総額が帳簿価額を下回る場合に減損損失を認識します。 測定は回収可能価額まで、すなわち正味売却価額と使用価値のいずれか高いほうまで減額します。
止まっている施設では、これが単純になります。Q&A集は 「休止状態であることから将来キャッシュフローが生じないため使用価値はゼロとなります。 正味売却価額は売却額の見込みにより算定することになりますが、一般に売却できないものであれば 機械設備関係はゼロ、土地は鑑定評価や路線価等を参考に金額を算定することが考えられます」 としています。解体費のほうが売却価格より大きい場合についても 「売却価格−解体費用等がマイナスとなるため、評価額はゼロ円とするものと考えられます。 この時、当時の設計書等が存在しない状況などの、評価額を判断した際の記録を残すことが必要」 としています。
減価償却が先、減損が後
同じ年度に両方が起きるときの順序は、平成28年のQ&Aが明示しています。
減価償却については事業年度開始の時における帳簿原価又は帳簿価額を基に減価償却額を算定し行う こととされている(則§15~18)一方、減損処理については事業年度の末日において行うものと されている(則§8③二)ことから、減価償却を先に行うべきである。
同じ回答は、期中に除却した資産について 「期末時点において当該除却額分だけそもそも資産が存在していないことから、減損損失の計上は不要 であり、全額を除却費として計上する」としています。年度の途中で除却したものを、 期末にもう一度減損の対象として拾う必要はありません。
減損しても、企業債と補助金はそのままです
現場で心配されるのがここですが、平成28年のQ&Aは 「最終的には、企業債の繰上償還の規定及び補助金交付要綱の解釈によるものではあるが、 減損処理は、資産の処分ではなく、資産の評価減にすぎないことから、一般的に不要と考える」 としています。減損を避ける理由にはなりません。
減損損失を計上しない年度にも、注記が要ります
見落とされやすいのがこれです。施行規則第41条第1号は、 減損の兆候が認められた固定資産(減損損失を認識したものを除く。)について、 グループ化した方法、用途・種類・場所などの概要に加えて、 「認められた減損の兆候の概要」と「減損損失を認識するに至らなかつた理由」を 注記事項としています。
つまり、兆候ありと判定しながら損失を計上しなかった年度こそ、注記が必要です。 同条は注記事項を「(重要性の乏しいものを除く。)」としているので、 重要性の乏しいものまで書く必要はありません。ただし、重要性が乏しいという判断も、 兆候の判定をしていなければ下せません。
「認識するに至らなかつた理由」として書けることも、おのずと限られます。Q&A集は 「減損の兆候ありで減損損失を計上しないという場合は、帳簿価額より割引前将来キャッシュ・フロー 総額が大きい状況にあることが必要です」としています。 兆候ありで計上しないなら、割引前将来キャッシュ・フローを見積もった記録が要るということです。 減損の判定は、損失が出る年だけの作業ではありません。
建設仮勘定については、Q&A集の中で回答が分かれています
最後に、注意して扱うべき点を1つ挙げます。 計画が中止になり本勘定に振り替わらなくなった建設仮勘定について、 同じQ&A集の中に逆向きの回答が並んでいます。
事業見直しの結果、計画自体を取り止め、今後同実施設計が使用される可能性がない場合の 建設仮勘定残高については、減損会計を適用して、減損損失として処理するのが適当と考えられます。
本体工事が行われず、本勘定へ振り替えられることがないことが決定した場合は、 減損損失ではなく資産減耗費として処分することが適当です。
さらに同じQ&A集には、後年度の工事を見込んで支出した設計費について 「工事を実施しない決定をした年度において、資産減耗費として処理することになります」と 答えた回答もあります。1つめの引用と同じ「設計費だけが建設仮勘定に残った」場面で、 結論は資産減耗費のほうです。
いずれも同じQ&A集に載っている回答で、引用はこちらで直さず原文のまま載せています。 質問の書き方は違いますが、「本体工事が行われないことが決まった建設仮勘定をどう落とすか」 という場面は同じです。
ここは監査人および所管課と事前に整理してから処理を決めるべき箇所です。 どちらかが明らかに誤りだと決めつけて進めず、どちらを採ったかと理由を記録に残してください。 なお、使い道のない実施設計のように回収可能価額がゼロになる場合は、どちらを採っても 落とす金額は同じで、変わるのは経常損益に入るかどうかだけです。
なお、同じQ&A集は「将来的に一部改修工事を行い、資産として使用する予定があるのであれば、 当該改修工事分も含めて建設仮勘定として残し、最終的に本勘定へ振替を行うことが考えられます」 ともしています。使う予定が残っているなら、まだ落とす場面ではありません。
まとめ
- 除却と減損は選べる処理ではなく、廃止を決めたかどうかと使用をやめたかで決まります
- 廃止を決めて使用もやめたなら、現物が残っていても、決めた年度に除却します(有姿除却)
- 廃止を決めても、まだ使っていて処分が先なら、その年度は減損の判定です。 除却は実際に処分した年度になります
- 決めていないなら遊休資産として、毎年度、減損の兆候を判定します。 ただし回収可能価額が帳簿価額を上回れば、減損損失は計上されません
- 除却は資産減耗費(営業費用)、減損は減損損失(特別損失)。 経常損益に入るかどうかが変わります。ただし金額が大きく非経常的な除却は特別損失になります
- 撤去費用は新資産の取得価額に入れず、収益的支出で処理します。 撤去分と新設分が1本の契約になっていても、合理的な基準で按分します
- 長期前受金の戻入は、除却なら営業外収益(施行令第26条第2項)、 減損なら特別利益(施行規則第21条第2項)。相殺はできません
- 減損の兆候判定では、一般会計からの繰入金と長期前受金戻入を含めて業務活動の損益を見ます (繰入金を直前3事業年度の平均額とするのは、その先の将来キャッシュ・フローの見積りの話です)
- 兆候ありで損失を計上しなかった場合も、その理由を注記しなければなりません (重要性の乏しいものを除く)
- 減損しても企業債の繰上償還や補助金の返還は、一般的に不要とされています